日本建築の屋根形状 例(岡田作成)

日本建築の屋根は時代とともに様々な形に派生・展開し、建物の使用用途(住宅・寺院・神社)や格式・時代を見極める重要なファクターとなっています。

しかしそんな複雑に発達した屋根形式にも、大まかな分類というものが存在します。

この記事では日本建築の屋根構造の内、特に頻出な様式である

  • 切妻屋根
  • 寄棟屋根
  • 入母屋屋根
  • 宝形屋根
  • 陸屋根

の5つについて、奈良の和風建築を題材に解説していきます。

切妻屋根とは

屋根頂部から二つの傾斜面を葺き下ろした、本を伏せた様な形の屋根を切妻きりつま屋根と呼びます。
ローコストで雨仕舞いも良く、傾斜の角度によって日射や積雪量をコントロールできることから、世界中あらゆる気象状況の集落で見られる屋根の形となっています。

国内でも、庶民の住宅建築から本格的な寺院建築からまで、時代や身分を問わず幅広く採用されてきました。
特に古代における神社建築では最も格式の高い様式であるとされ、奈良時代以前に創建された神社本殿は、ほぼすべて切妻屋根です。

旧南都銀行手貝支店

奈良や京都で見られる町家建築は、都市部の密集した街区に家を建てる都合から切妻屋根であることが多くなっています。

旧南都銀行の手貝支店は昭和期に設計されたと見られる近代建築ですが、町家建築を取り入れた設計となっており、その本棟はいわゆる切妻屋根です。

長壽會細菌研究所

長壽會細菌研究所(岡田撮影)

また、奈良公園裏手にある長壽會細菌研究所は、切妻屋根の棟が複数連なることで形成されています。

寄棟屋根とは

大棟から二方向に屋根が流れる切妻屋根に対し、四方向に屋根が流れる屋根を寄棟屋根と呼びます。

こちらも比較的シンプルな造形であるため、やはり洋の東西を問わず世界中で使われている屋根形状です。

日本では、とくに奈良時代において格式が高い形状であるとされ、東大寺大仏殿や唐招提寺金堂など平城京のころの主要寺院で広く採用されました。

東大寺大仏殿(wikiより)
東大寺大仏殿(wikiより)

寧楽書院

入母屋屋根とは

上半分が切妻造、下半分が寄棟造になっている屋根を入母屋いりもや屋根と言います。
西洋建築では見られない屋根形状ですが、日本では平安時代以降に格式が高い屋根として定着し、現代に至るまで幅広く普及している屋根となっています。

旧奈良県庁舎

奈良県下の近代建築には、旧奈良県庁舎をモデルケースとした和風の外観を持つものが非常に多いです。
その原点である旧奈良県庁舎は、切妻屋根と入母屋屋根を組み合わせた構成となっていることから、本建築の影響を受けた奈良ホテル奈良県立戦勝記念図書館など、数多くの建築が入母屋造の屋根を有しています。

奈良ホテル別館

奈良ホテル別館(三木撮影)

入母屋屋根単体の建築としては、大和郡山に移築された奈良ホテル別館などが挙げられます。

宝形屋根とは

寄棟屋根のうち、正方形の四方隅棟が頂上に集まるピラミッド型の屋根を、宝形屋根と呼びます。

寺院建築に頻繁に用いられる形式で、奈良においては法隆寺夢殿、興福寺北円堂などに用いられます。

頂上には雨仕舞として露盤・宝珠が設けられ、それが一種のシンボルとなります。

JR奈良駅駅舎

旧JR奈良駅舎は、鉄骨鉄筋コンクリート造の近現代建築ですが、奈良の風致を尊重した寺院風の外観を持つ和洋折衷建築で、その中央棟は宝形屋根となっています。

奈良県物産陳列所

奈良県物産陳列所 楼閣部分 頭頂部分の屋根が方形屋根(岡田撮影)

奈良公園に位置する奈良物産陳列所は、両翼に廊下が伸びる左右対象の平面構造をもつ建築ですが、その両端には宝形造の楼閣がそびえるなど、平等院鳳凰堂を想起させる外観となっています。

陸屋根とは

陸屋根とは、傾斜の無いまっ平の屋根のことです。
最もシンプルな屋根形状といえる陸屋根ですが、雨量が多く積雪も見られる日本においてはデメリットのおおい屋根と言えるでしょう。

そのため日本において陸屋根の建築は、鉄筋コンクリートやアスファルトルーフィングが登場し、雨仕舞いや耐久性のデメリットを克服できるようになった近代以降の建築でしか見られませんでした。

現代建築では当たり前となったフラットな屋根ですが、奈良の建築巡りでは南都銀行本店など少数派の屋根と言えるでしょう。

南都銀行 本館(wikiより)
南都銀行 本館(wikiより)