この記事では、日本建築の構造材である斗栱のうち、比較的シンプルで格式の低い
について、奈良の和風建築を題材に解説していきたいと思います.
目次
概要
伝統的な木造建築(特に寺院)の屋根を見ると,その屋根を支える柱の頂部に四角形と舟形の部材が交互に折り重なった,複雑な部材群を確認することができます.
この部材群のうち,四角い枡のような形をした材を「斗」,斗を載せる舟型の材を「栱(肘木)」といい,まとめて「斗栱」と称します.
地震大国であり降水量の多い日本では,軒先をなるべく深く出しつつも屋根の荷重を支え,柱と梁の剛性を保つための部材である斗栱は非常に重要な役割を持つ部材でした.
こうした構造材は近代以降はもっぱら社寺建築にしか採用されなくなりますが,格式が低めの様式に限って言えば,明治から戦前にかけて作られた和風建築の中にもしばし採用されました.
舟肘木とは
舟肘木とは,斗を用いず直接柱上に設ける舟型の肘木のことです.
組物の中では最も簡略的な形式であり,仏教建築では非常に格式の低い建物・空間に使用される構造ですが,神社や住宅など幅広い機能の建物で利用されてきました.
近代建築においては,長野宇治平が旧奈良県庁舎のデザインコードとして舟肘木を利用して以来,奈良ホテルや日本聖公会奈良基督教会教会堂など,様々な近代和風建築において利用される事となりました.
平三斗とは
斗を使わない舟肘木よりはもう少しだけ格式の高い様式として,平三斗が挙げられます.
平三斗は,一番下に大斗を起き,その上に肘木を載せ,その上に更に3つの斗を横一列に並べる組物す.
奈良県の近代和風建築では奈良県立戦捷記念図書館の壁面にて利用されています.
出三斗とは
さらにその平三斗を直行させ,十字状としたものが出三斗です.
奈良の近代建築では,奈良県立戦捷記念図書館や奈良県立戦捷記念図書館の車寄せに利用されています.
また,戦捷記念図書館は壁面に平三斗が設けられていますが,壁面同士が直行する隅柱においても,必然的に出三斗が利用されています.