古梅園|大正モダンの墨工場

古梅園 正面(図版出処:岡田撮影)

墨づくりは、奈良が誇る伝統産業の一つである。
そのため県下には、呉竹や喜壽園など数々の伝統ある製墨業者が存在し、国内の墨づくりシェアの大部分を占めている。

そんな奈良の墨づくりの中でも代表的なのが、その代表が天正5(1577)年創業の「古梅園」である。
400年以上の歴史を持つ古梅園は、書道や水墨の世界でその名を知らぬものはいないほど有名なメーカーであるが、実はその店舗・工場建築もまた、見ごたえのある町家建築だ。

古梅園が現在拠点を構えるのは、近鉄奈良駅の南、餅飯殿商店街の西に位置する「椿井」と呼ばれる一帯。
住宅地と観光地と駅前繁華街の混じり合った独特の雰囲気を持つ椿井の町並みを歩くと、突如現れるその店舗の存在感に圧倒されるだろう。
「墨」と書かれた巨大な看板と、どっしりとした構えの黒塗りの外壁、そして一街区にまたがる広大な敷地いっぱいに建つ大規模な建築群が、その歴史の重さと深さを物語る。

玄関に当たる店舗部分は、営業時間であれば出入り可能。
その奥の工場群も、有料の墨づくり体験を行うことで見学することができる。



基礎データ

所在地奈良市椿井町
設計者不明
構造木造二階建
竣工年大正初期
利用状況店舗有
見学条件要予約(4,000円〜)
依水園 基本データ

施設利用案内

にぎり墨体験 (株)古梅園 | 工芸体験なら 奈良の伝統工芸をまるごと体験

墨の香や 奈良の都の 古梅園 古梅園では古くからの伝統を受け継ぎ、昔ながらの採煙方法にこだわっています。にぎり墨の体験をされた方は無料で工場を見学して頂けます。

見学

施設は公道に隣接しているため、外観は通年でみることができます。

施設内部については、営業時間中であれば店舗部分のみ可能。
工房も含めた施設全体については、にぎり墨の体験学習に参加することで見学することができる。

  • 営業時間:9:00~17:00
  • 休園日:土日祝日 (にぎり墨体験は11月~4月中旬まで)
  • 見学費用:4,000円〜
  • 参加人数:1〜25人

成立背景

天正7年(1577年) 創業
平成10年(1998年)国登録有形文化財に登録
古梅園 年表

建築について

全体像

古梅園(wikiより)
  • 東を正面とし、一街区にまたがる広大な敷地をもつ。
  • 大部分の建物の建設は、大正初期と見られる。
  • 玄関から奥の工場まで、資材や製品を運搬するためのトロッコレールが敷設されている。

  • 表通りに面する敷地の東北端には、店舗と主屋を矩折れで繋ぐ屋根付の屋根付きの土塀が建つ。特にその東面には瀟洒な出入りが設けられ、柱は1間おきに立て、腰に板壁を貼る丁寧な作り。
  • 敷地北側の路地に面して建つ壁は、大壁造で屋根を持つ高塀。
    主屋の落ち棟から離れ座敷、中内蔵を挟んで磨き所までをつないでおり、それぞれの棟の壁面を共有する。塗込の軒蛇腹で屋根を支え、漆喰仕上げの軒下まで伸びる腰板を貼る軽快な意匠を持つ。

住宅・店舗部分

敷地東側、表通りに近い部分には、店舗や従業員の生活の場が並ぶ

  • 最も東側に平入り厨子二階の店舗を構える。店舗の表構えは、二階のたちも低く、格子は多用せず、重厚な黒漆喰塗の外壁が、伝統的な近世町家の面影を残す。庇及び上屋とも船枻造り。
  • 店舗の西側には2階建ての主屋が接続する。一階に6畳の座敷を構え、その東西それぞれに前庭・中庭に開いた縁側を設けるほか、幅7尺でアカマツの床柱を引き込んだ床の間を持つ。座敷に隣接した仏間の花頭窓や、梅の意匠をもつ襖の引手など、随所に趣向を凝らす。
  • 主屋から中庭を挟んで北側には、2階建ての離れ座敷が並ぶ。
  • 主屋南側には、落ち棟形式で木造平屋建ての台所が接続する。元は製墨職人の食事所であったこの空間は、北側の土間に作業用軒道が東西に貫通し、内部南側に広敷を設ける。
  • また台所の西側には釜屋が並ぶ。真壁造漆喰仕上げの切妻造の建物で、立ちは高く内部は土間とする。
  • 台所から渡り廊下を経て南側には、東西に伸びる細長い事務所(現仕上げ作業所が建つ。北側1間は通路で、南側に製品包装等の作業室や事務室を配する。西には腰板貼り軒蛇腹付の商品蔵が接続。

工場部分

敷地西側には、中庭を挟んで主に墨の製造や保管を行う建物が並ぶ。

  • 敷地で最も大きい建物である磨き作業所兼倉庫は、コの字型の大壁造に2階建の重厚な構えの建物。元は墨型等を納める倉庫であったが、現在は磨き作業所や車庫、倉庫等として使用する。南翼屋は敷地の東方から続く作業用の軌道レールが貫通し、北翼屋は敷地境にあり路地への出入口が設けられている。
  • 磨き作業所兼倉庫の南翼屋に接続する銅壺場 は、膠を溶かす釜屋がある。外観は梁間の長い漆喰仕上げ大壁造で、 内部は土間に煉瓦造の釜2基を据え付け、小屋組を見せる。

その他、乾蔵・中内蔵・西内蔵・食堂・脱衣室・灰替所・細工場など無数の建物を持つ。

参考文献

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