奈良と大阪を結ぶ近鉄奈良線の沿線上に、東洋古美術の蒐集・展示を担う「大和文華館」がある。なまこ壁のような青いタイル張りとコンクリートの調和が美しいその本館は、近代数寄屋の祖とされる吉田五十八が設計した奈良を代表するモダン建築であるが、ここではあえてその附属施設である「大和文華館文化ホール」にも注目してみたい。
寺院建築のような和風の外観と、西洋のパーティー会場のように艶やかな内装を持つこの建物は、かつて奈良ホテルのバー・ラウンジであった部分を移築保存した、非常に贅沢ともいえる豊かなパブリックスペースなのである。
目次
基礎データ
現名称 | 大和文華館文化ホール |
旧称 | 奈良ホテル別館 |
所在地 | 奈良市学園前南 |
設計者 | 武田五一・片岡安 |
構造 | 木造平屋建 |
竣工年 | 明治42年(1909) |
利用状況 | 貸切有(有料) |
見学条件 | 外観は自由(敷地への入場料有り)|内部は要施設利用 |
施設利用案内
大和文華館は国宝や重要文化財を数多く展示している奈良の美術館です。文華苑では四季折々の自然を楽しむことができます。
成立背景
- この旧奈良ホテル別棟(旧酒場・遊技場)は、明治42年の創建当時は奈良ホテル本館の南部に設置されていた。
- 昭和45年に客室5室に改装。このころ内部の付柱・巾木・長押が一新されたほか、旧図面にあったマントルピースも撤去されたと思われる。
- 昭和59年の奈良ホテル新館増築の際、「古都保存法」の面積規定によってホテル敷地から撤去。
- 昭和60年に学園前にある「大和文華館」に移築され、1室に復元されるとともにトイレや湯沸室が設置された。
- 本館と連絡されていた渡り廊下は完全になくなり、接続部分だった東面南よりの壁は現在漆喰で塞がれている。
- 現在は「大和文華館」の「文化ホール」として使われている。明治期のホテルラウンジの様子を残した、貴重な遺構。