鬼瓦・鴟尾・相輪とは?|奈良巡りで学ぶ、和風建築の屋根飾

日本建築の屋根には、雨漏り防止や魔除の目的から、

  • 鬼瓦
  • 鴟尾
  • 相輪

といった屋根装飾が設けられています。
この記事では奈良の和風建築を題材に、屋根飾について解説していきます。

概要

和風建築の屋根用語の記事でも解説した通り、日本建築の屋根は通常二枚以上の斜面を組み合わせて作成されることから、その斜面の頂部には「むね」と呼ばれる稜線が存在します。

この棟には、雨仕舞あめじまいと装飾を兼ねて、さまざまな意匠を施した部材が設置されます。

この飾りは、その建築の用途や格式、建設年代の影響を受けていることから、建築が建てられるに至った背景を推定する手がかりとなります。

鬼瓦とは

鬼瓦とは、大棟降棟などの末端に設置される、装飾性のある大きな瓦のことです。
名前に「鬼」とついているため誤解を受けがちですが、実際には人の顔や獣の顔、蓮花文や雲型の模様が描かれたもの、ほとんど無地のものも多いです。

和風建築のほとんどで見ることができますが、依水園のような大規模な邸宅建築などではさまざまな趣向の凝らされた鬼瓦や、名工による鬼瓦を見ることができます。


近代以降においても、日本聖公会奈良基督教会堂鼓坂小学校など、瓦屋根を持つ和風建築であれば、鬼瓦が利用されています。

鴟尾とは

鴟尾しびとは鳥の尾を模した棟飾りの一種で、主に古代建築の客殿・仏殿に用いられました。

大棟降棟稚児棟のいずれの末端にも用いられた鬼瓦と異なり、鴟尾は通常大棟に限り用いられます。
(出土品を除けば)唐招提寺金堂(奈良時代末期)の西側の一方が現存する最古の鴟尾であり、東大寺大仏殿の物などその多くは後世による復元です。

唐招提寺金堂 鴟尾
(画像出処:Wikipedia
東大寺大仏殿
(画像出処:Wikipedia

遺例上、鎌倉以降にはほとんど用いられることはなく、代わりに室町時代以降は魚類を模したしゃちが登場し、これが用いられるようになります。

ただし、奈良の仏教建築の要素を取り入れた長野宇平治による旧奈良県庁舎では、近代建築でありながら鴟尾が利用されました。

旧奈良県庁舎は現存しませんが、宇平治のデザイン様式を引き継いだ辰野金吾の奈良ホテルにも鴟尾が用いられており、その状況を確認することができます。

相輪とは

旧JR奈良駅駅舎 頂点に相輪を掲げる(岡田撮影)

相輪とは、五重塔や多宝塔などの仏塔(塔婆とうば)の頂点部分に設けられる、露盤ろばん九輪くりん水煙すいえん宝珠ほうじゅなどからなる屋根飾りのことです。
古い塔ほど(塔自体の長さに対して)長いものが多く、時代が下るにつれて形骸化により短くなる傾向があります。

また、最下部の露盤と最頂部の宝珠のみで構成されたものを「露盤宝珠」とよび、法隆寺夢殿(奈良時代後期)や興福寺北円堂(鎌倉時代)など、宝形屋根の単層建築において、その最頂部に設置されました。

仏教建築を模して作成された旧JR奈良駅舎は、宝形屋根を持つ平屋建ての近代建築ですが、その頂部には相輪が設けられています。

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