国立大学である奈良女子大学といえば、官僚建築家山本治兵衛国の手によるハーフティンバー調の洒脱な洋風木造建築「奈良女子大学記念館」が有名であろう。白地の外壁に薄緑に塗装された木材の取り合わせは、大学正門や向かいの奈良警察署鍋屋連絡所にも取り入れられるなど、女子大学建築のデザインコードにもなっている。

 こうした西洋の大学を彷彿とさせる記念館がある一方、奈良女子大学には和風木造近代建築も存在する。奈良出身の建築家岩崎平太郎によって建てられた「奈良女子大学佐保会館」は、奈良ホテルを彷彿とさせる白とブラウンの外観に、本格派の和室や格天井の大ホールを取り入れた和洋折衷建築となっている。

基礎データ

現名称奈良女子大学佐保会館
旧称
所在地奈良市北魚屋西町
設計者岩崎平太郎
施工者尾田利吉(尾田組
構造木造二階建て
竣工年昭和3年(1928)
利用状況ホール有
見学条件要施設利用
奈良女子大学佐保会館 基本データ

施設利用案内

ホール利用目的

以下の利用目的を満たす場合、佐保会館の利用が可能となる。

1.佐保会員相互の親睦・交流
2.奈良女子大学との連携による学術研究のための研修
3.教養・文化向上を目指した地域社会への貢献のための催事

一般社団法人 佐保会

会館の利用日時

利用日時は基本的に月曜日ー金曜日の10時〜16時
(祝日および夏期・年末年始の休業日は休館)

申込先

  • 住所:〒630-8263 奈良市北魚屋西町奈良女子大学構内
  • 電話番号:0742-23-3805 (Fax: 0742-22-4144)
  • Email:sahokai@cc.nara-wu.ac.jp
  • 郵便振替:00960-9-30417

詳細は公式HPより

成立背景

明治41(1908)年奈良女子高等師範学校成立
大正3(1914)年第二期卒業生により、同窓会である佐保会が発足
大正13(1924)年皇太子御成婚記念事業として、会館の設置が企画
昭和3(1928)年竣工
昭和25(1950)年炊事場まわりの改装工事が行われる
平成17(2005)年国の登録有形文化財に指定
平成18(2006)年奈良女子大学卒業生である石井らの手により、改修工事が着工。耐震補強・屋根瓦の葺き替え・漆喰壁の補修・建具の刷新などが行われた。
佐保会館 年表

建築について

全体像

  • 奈良女子大学の構内北端に位置する、木造2階建て桟瓦葺入母屋造
  • 桁行十三間、梁間六間半で、矩形に近い平面を持つが、一階東面には炊事場・トイレのための突出部が付随する。
  • その他、正面西寄りには、入母屋造妻入の車寄せが設けられる。

立面

  • 上下階とも、板張りの腰壁に漆喰塗りの真壁造。西洋風の上下窓を連続させ、桁を舟肘木ふなひじきで支える。いずれも奈良公園近辺の近代和風建築に見られる特徴である。(特に、開口部上下に内法長押うちのりなげし飛貫ひぬきがめぐり、妻飾りに豕扠首いのこさすが用いられるなど、奈良ホテルとの類似性が強い。)

屋根

  • 母屋・車寄せはどちらも桟瓦葺入母屋造
  • 一階下屋部分の屋根は桟瓦葺の片流れ屋根であり、銅板葺の庇が南・西・北面の同じ高さにめぐらされている。
  • 小屋組みはキングポストトラス。棟札には「尾田利吉」の名が残される。

内装

第二和室

  • 南側の和室(第二和室)は、十二畳半と十畳の二間続きの大きな座敷となっている。
  • 東には、中央に磨き丸太を建てた床、天袋と筆返しのある違棚、斜め格子の付書院を構える。猿頬天井さるぼおてんじょう竹の節欄間たけのふしらんまが用いられるなど、丁寧だが華美すぎない造りが随所に見られる。
  • また、座敷は西隣の納戸とも襖で接続しているが、こちらの壁には桜・梅鉢・半開梅・捻梅の透かし彫りを入れた四枚の板が、川の流れを形作るようにはめ込まれた透かし欄間となっている。これは、奈良女子大学の裏手に流れる佐保川やその河川敷に植えられた桜・梅を見立てたものと考えられている。

大ホール

  • 階段を上がり、擬宝珠高欄親柱がある階段ホールを抜けると、大ホールとなる。
  • 折上げ格天井の迫力ある天井に、金属製の笠に猪目の透かし彫りが並ぶ独特な照明が吊り下げられる。同様の透かし彫りが黒板などの調度品に見られることから、岩崎によるオリジナルの装飾と見られる。
  • 改修以前はリノリウム貼であったが、現在では二重床の板張りに張り替えられている。
  • 北東部の便所は、改修の際に新たに付けられたもの。以前は控室・ティールームであった。

参考文献